社会学者 上野千鶴子さんの待望の最新エッセイ集『マイナーノートで』がNHK出版より10月28日発売になります。目標を持たない学生が研究者となるまでの過程から、趣味・嗜好、次世代への思い、惜別までを低く静かな「声調」で奏でた随想作品集です。
自らのうちに響く音色を自らの言葉で織り上げた、待望の最新エッセイ集
社会学者・フェミニストとして知られる上野千鶴子さんは、切れ味鋭く社会を分析、「老後」への提言や人生相談、東大新入生への祝辞が話題となるなど、多くの読者の共感と信頼を得てきました。
その明晰な「頭脳」は、どんな「感性」を併せ持っているのでしょうか。その答えが本書には詰まっています。子ども時代の「宗教遍歴」や学生時代の鬱々とした日々、研究者への道のりといった「来し方」から、食の嗜好や山登り、観劇などの趣味、老いへの不安、次世代への思い、他界した先達への哀悼、喪失の哀しみまでを、低く静かな「大人の音色」で奏でた随想作品集です。
「あとがき」より
音楽に長調と短調があるのはご存じだろう。英語で言うとメジャーとマイナー。ノートには調べ、という意味がある。
人格にもメジャーノートとマイナーノートがある。
「上野さん、どうしていつもそんなに元気で活きいきしてるんですか」と訊かれる。
「秘訣を教えてください」とも言われる。
「なに、簡単です。そうじゃない部分を他人さまには見せないだけです」と答える。
そうじゃない部分。自分のなかにゆっくりとマイナーノートで流れる時間。
それを汲み上げてそっと差し出すようなエッセイを、書いてみたいと思った。
フェミニズムや介護といった研究領域、コロナや戦争といった社会の出来事にも触れつつ、自身の裡を流れる様々な音色を言葉に託していく――「考えたことは売るが、感じたことは売らない」とかつて豪語した上野さんも昨年、後期高齢者となりました。気概はあるが、不安もある…。そんな上野さんが「奏でる」文章が、読み手の感情を揺さぶり、のちに深い共感をもたらします。
人生の後半を視野に入れたすべての大人たち必読の一冊です。
目次
Ⅰ 通奏低音
「父の娘」として/棄教徒/犬派/衛生観念/師匠のDNA/後悔だらけの人生/役に立つ、立たない?/捨てられない理由/不要不急
Ⅱ インテルメッツォ
チョコレート中毒/寿司食いてえ……/フラワーボーイ/芝居極道/山ガール今昔/森林限界/トイレ事情/テキストのヴェネツィア/旅は人の記憶
Ⅲ リタルダンド
被傷体験/娘が戦争に志願したら?/学校に地雷を置いてきた……/変わる月経事情/度はずれたナルシシズム/産まないエゴイズム?/認知症当事者から見える世界/医者の死に方/憤怒の記憶/とりかえしのつかないものたち/死ぬ前に赦し赦される関係を
Ⅳ 夜想曲
感情記憶はよみがえるか/手の年齢/転倒事故/おひとりさまのつきあい/上野千鶴子基金設立 「恩送り」へ才能を育てた才能 追悼 山口昌男/「男らしい」死 追悼 西部邁/中井さんは「神の国」へ行ったのか? 追悼 中井久夫/戦後最大の女性ニヒリスト 追悼 富岡多惠子/わたしたちはあなたを忘れない 追悼 森崎和江/ごまかしを許さないきびしさ 追悼 西川祐子/女の自由を求め、日常で戦った 追悼 田中美津/どこにも拠らず考えぬいた 追悼 鶴見俊輔/色川さん、ありがとう 追悼 色川大吉
あとがき
NHK出版デジタルマガジンで一編公開中!
本書より「産まないエゴイズム?」を公開しております。ぜひお読みください。
著者紹介
上野千鶴子(うえの・ちづこ)
1948 年、富山県生まれ。社会学者、東京大学名誉教授、認定NPO 法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学、ジェンダー、介護など、幅広い分野で活躍。著書に『近代家族の成立と終焉』『生き延びるための思想』(共に岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』(法研/文春文庫)、『こんな世の中に誰がした』(光文社)、『フェミニズムがひらいた道』(NHK 出版)、『ひとりの午後に』(同前/文春文庫)など多数。
商品情報
『マイナーノートで』
著者:上野千鶴子
出版社:NHK出版
定価:1,980円(税込)
発売日:2024年10月28日発売
判型:四六判上製
ページ数:256ページ
ISBN:978-4-14-081977-7
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