2024年12月8日(日)に開催した「第52回全日本空手道選手権大会」「第3回全日本空手道団体形選手権大会」の決勝戦の様子と、優勝選手のコメントをお届けします。
年に一度の日本一決定戦が開幕。大会を盛り上げる新たな試みも
「第52回全日本空手道選手権大会」では47都道府県、高体連、学生連盟、実業団の代表および全空連推薦選手が参加し、日本一決定戦に挑みました。また、「第3回全日本空手道団体形選手権大会」の決勝戦も同日開催。この大会が日本武道館で開催されるのは初めてです。決勝では、3人が息を合わせて動きをシンクロさせる「形」に続いて、形の意味を実演する「分解」も披露されました。
【大会結果発表】
第3回全日本空手道団体形選手権大会
●女子
優勝:学連① 国士舘大学(堀場早耶、吉本弥可、柏本菜那、倉岡穂乃花)※吉本は、上が土のよし。
準優勝:学連② 駒澤大学(酒井虹穂、稲璃岬、関澤愛莉、石田風吹)
3位:高体連① 八雲学園高校(岸田羽未、小林実紗、田村ひまり、西巻紅美)
●男子
優勝:全空連推薦(菊地凌之輔、岡本拳、北澤以進)
準優勝:関東地区③ 群馬県(本島照英、江原怜凰、尾張隆晟、龍見侑曉)
3位:学連① 国士舘大学(藤田康紘、柴谷海、大成輝波)
第52回全日本空手道選手権大会
●女子個人形
優勝:東佐江子(全実連)
準優勝:石橋咲織(九州地区)
3位:三島きり(全空連推薦)、尾野真歩(全空連推薦)
●男子個人形
優勝:西山走(前年度優勝)
準優勝:本一将(全空連推薦)
3位:池田竜晟(全空連推薦)、在本幸司(東北地区)
●女子組手
優勝:小堂利奈(京都府)
準優勝:崎山紬(香川県)
3位:寺澤紗良(学連)、釜つばさ(全空連推薦)
●男子組手
優勝:嶋田力斗(全空連推薦)
準優勝:崎山優成(全空連推薦)
3位:南元希(大阪府)、森優太(青森県)
団体形選手権 女子は国士舘大学が雪辱を果たす、男子は全空連推薦が優勝
女子団体形の決勝戦に進出したのは、昨年と同じく駒澤大学と国士舘大学。昨年はどちらも44.8の同点となり、判定で駒澤大学が優勝しました。駒澤大学は4年生の引退でメンバーが入れ替わり、稲以外の3名は初出場。対する国士舘大学は昨年と同じく4年生の堀場、吉本、3年生の柏本が中心となり、1年生の倉岡は予選に出場しました。
昨年と同じく「ゴジュウシホショウ」で決勝に挑んだ駒澤大学は、力強い演武を披露。形のパートで強く印象づけた上段肘打ち、掌底での両手突きを、分解ではぎりぎりの距離感で緊迫感ある駆け引きとして表現しました。対する国士舘は、昨年と同じ「トマリバッサイ」を選びながら、昨年より数段アップしたキレとスピード感を存分に発揮。序盤から手刀での素早い連続技をくり出します。分解では「前回よりも大きな技を入れたい」と話していた通り、投げ技、連続での中段受けなどで3人の息がぴたりと揃った見事な技を見せました。結果は43.9点で国士舘大学の勝利。昨年の雪辱を果たしました。
<コメント>
女子団体形 優勝:国士舘大学
「昨年この大会で負けてからもいろいろな大会に出ましたが負け続け、本当に勝てるのかと不安になるばかりでした。でも、この4人で組めるのはこれが最後と、思い切って挑んだ結果、優勝をつかむことができました」(堀場早耶選手)
「昨年と同じ形で勝負しましたが、ずっと同じことをやり続けてきたわけではなく、試合に出るたびに試行錯誤をくり返し、何度もチャレンジした結果が今日の演武です。これが正解というわけではないけれど、一つのゴールを見つけたような気持ちになりました」(吉本弥可選手)
「大好きな先輩とチームを組むことができて、本当に光栄でした。みんなの勝ちたいという気持ちが一つになってつかんだ結果だと思います。来年はどうしようというプレッシャーはありますが、今はただうれしいです」(柏本菜那選手)
「このチームに加えていただけて、大丈夫かと心配になることもありました。でも、頼れる先輩の優勝を間近で見られてよかったです。かっこよかった!」(倉岡穂乃花選手)
団体形選手権 男子は全空連推薦チームが初優勝
団体形男子の決勝では全空連推薦と群馬県が対決。群馬県は去年の優勝チームで、本島照英がメンバーに残り、大学生の江原、高校生の龍見と、若いメンバーが新たに加わりました。一方の全空連推薦は、菊地が社会人3年目の25歳、岡本と北澤は1年後輩にあたります。
全空連推薦は、松濤館流最高峰の形「ウンスー」でチャレンジ。形ではスピーディな手技の連続、ダイナミックな反転など、ジャンプからの着地など、緩急のある技をぴたりと揃えました。分解では、ギリギリの間合いからくり出す蹴り、大きな投げを打ちながらも相手を倒すなど、流れを意識した構成で魅了しました。群馬県の「ゴジュウシホショウ」は前半にブレが見られたものの最後まで集中力を切らさず、激しい分解を披露。若さと勢いを感じさせました。結果は全空連推薦が45.9で優勝しました。
<コメント>
男子団体形 優勝:全空連推薦
「予選では点数が思うように伸びませんでしたが、決勝では思い切った演武ができました。慢心せずに練習し、世界を取るまでこのメンバーでがんばりたいです」(菊地凌之輔選手)
「試合には楽しんで臨むことができました。社会人になって、まさかこのメンバーで団体形ができるなんて思っていなかったので、こうやって優勝できたことが夢のようです」(岡本拳選手)
「学生時代と違って、時間の自由がきかない中で練習を重ねました。私の仕事の都合もあって、満足な練習ができないこともありましたが、優勝できたことは本当にうれしい。今後も3人で努力を続けていきたいです」(北澤以進選手)
女子個人形、東佐江子が初優勝
前年度優勝者で世界王者の大野ひかるが現役を引退した後、女子個人形は混戦模様。尾野真歩(全空連推薦・世界ランク2位)、三島きり(全空連推薦・同3位)、大内美里沙(関東地区・同4位)、東佐江子(実業団・同6位)らが熾烈なトップ争いを続けています。その中で決勝に進出したのは東佐江子と石橋咲織(九州地区)。どちらが勝っても初優勝です。
昨年の準優勝者・東は「パープーレン」を演武。ゆったりとした動作から一気にスピードに乗り、力強い突きや蹴りに繋げます。見せ場の片足立ちもしっかりと止まり、体軸の安定感が光りました。対戦相手の石橋咲織は初めての決勝進出ながら、今年は国民スポーツ大会優勝、ワールドカップ女子団体形優勝と、勢いにのっています。決勝戦の「ゴジュウシホショウ」では、持ち前のパワーと瞬発力が冴え、見せ場では抜き手から転身しての騎馬立ちを華麗に決めました。結果は45.2点の高得点を出した東が優勝。新時代の女王となりました。女子形は近年、宇佐美里香が4連覇、清水希容が7連覇、大野が4連覇。東にもすでに連覇の期待がかかります。
<コメント>
女子個人形 優勝:東佐江子
「これまでのプレミアリーグなどで優勝できなかった理由を探り、自分に足りない安定感を第一の課題として練習してきました。今日は私の100%を出し切れた。優勝はその結果だと思います。女子形には勝者の責任もありますが、今はただうれしいです」
男子個人形、西山走が3連覇
今大会では、有力視されていた本一将(全空連推薦)、本龍二(実業団)、池田竜晟(劉衛流龍鳳館)が同じグループで競うなど、序盤から波乱の展開に。そんな中、決勝に進出したのは、国内外で今年負けなし、本大会2連覇中で世界空手連盟(WKF)世界ランク1位の西山走。対戦相手は一昨年に決勝戦で西山と対戦した本一将です。
本が決勝戦に選んだのは、岩の上の鶴をイメージした「ガンカク」。海外でも人気のある形ですが、片足立ちが多くバランスを崩しやすい場面が多くあります。本は、安定感のある下半身をいかし、回転からの片足立ち、そこからの蹴りなど、難易度の高い動きを見事に決め、大きな拍手を浴びました。対する西山は王者の貫禄。パワーと柔らかさを併せもつ「スーパーリンペイ」で挑みます。西山の分厚い肉体は、緻密に計算された力の抜き差しを澱みなく表現。結果は47.2対46.8といずれも高得点をマークしながら、わずかな差で西山が3連覇を決めました。
<コメント>
男子個人形 西山走
「相手は同い年で長年のライバルですが、結果を出せてほっとしています。3連覇については、あまり意識していませんでした。それよりも今は世界に対する意識が強くて、どんな試合でもかならず勝つという意識で全力を出しています。来年も世界一を目標に、もっともっと力をつけていきたいです」
学生対決となった女子組手は小堂利奈が初優勝
永井カンナ(学校法人国士舘)、寺澤紗良(学連・中部学院大学3年)、嶋田さらら(全空連推薦)、釜つばさ(全空連推薦・同志社大学3年)などの強豪を制して決勝に進んだのは、京都産業大学4年生の小堂利奈と、高松中央高校3年生の崎山紬。小堂は昨日の団体組手で優勝した京都府のメンバーの一人。崎山は男子組手で決勝に進出した崎山優成の妹です。
決勝では小堂が先に飛び込み、スピードのある上段突きで1ポイントを先取。その後も小堂の上段突きが連続で決まり、7対0まで崎山を追い込みます。あきらめない崎山は上段突き、中段突きで反撃を試みますが、結果は9対3で小堂が初優勝を果たしました。
女子組手 優勝:小堂利奈
「高校時代は新型コロナウイルスのせいでインターハイがなくなり、大学でも今まで優勝経験がありませんでした。今日やっと優勝できて夢のようです。相手は同じ日本代表でよく知っている相手なので、隙を作らず、積極的に攻めることを意識していました。上段突きは狙っていた技。うまく決まってよかったです」
男子組手、ライバルを制して嶋田力斗が初優勝
決勝戦に進出したのは崎山優成(全空連推薦)と嶋田力斗(全空連推薦)。2人は高校時代からのライバルで、崎山は2020年から22年まで全日本3連覇、嶋田は22年から24年まで全日本体重別選手権優勝の-84kg級3連覇と、いずれも実績は充分です。
試合の序盤は、両者が相手の間合いをはかり、手の出ない時間が続きましたが、崎山が仕掛けたところで嶋田が1ポイント先取。続いて嶋田が上段蹴りで3ポイントを取り、流れを引き寄せます。残り35秒を残して激しい攻防がくり広げられましたが嶋田がリードを守り、初優勝を遂げました。
<コメント>
男子組手 優勝:嶋田力斗
「見たかった景色がやっと見られました。今まで『惜しい』で終わることが多かったけれど、やっとつかめた念願のタイトル、今は率直にうれしいです。2、3回戦までは動きがかたかったけれど、後半になって調子が上がってきました。でも、相手もどんどん強くなるので、ミス一つが命取りになると、3分間フルに集中することを意識しました。疲れたけれど、自分の組手を出しきれたのがよかったです。今年は体重別とアジア大会、そして全日本と結果を残せて、自信につながった1年。来年もタイトルを取りたいし、世界でも成績を残したいです」
空手をもっと楽しめるさまざまなイベントも
今大会では初の試みとして、さまざまな空手イベントを実施しました。午後には、きらびやかな制服姿の海上自衛隊東京音楽隊が『栄光の架橋』など3曲を華やかに演奏し、会場を盛り上げました。続いての「功労者表彰」では、空手道普及に貢献した東京オリンピックメダリストの喜友名諒さん、清水希容さん、荒賀龍太郎さんが表彰台に登りました。
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