夏休みを前に、長い休みを使って、子どもに様々な体験をさせてあげたい!と考える親は多いはず。文科省の傘下の独立行政法人「国⽴⻘少年教育振興機構」(以下、機構)では「⼦どもの成⻑を支える20の体験」というパンフレット改定版を配布中だ。
https://www.niye.go.jp/wp-content/uploads/2024/04/kodomoseityo2024.pdf
そこには子どもの生活環境の中に意図的、計画的に多様な体験の場や機会を作っていく際の指標になるよう、成長を支える体験活動として8つの領域を挙げている。その8つとは・・・?
夏休み前のママ必見!こどもたちのこの夏の成長を支える8つの体験活動領域とは?
1.自然体験(キャンプ・登山、カヌーなど)
2.集団体験(クラブ、子供会など)
3.地域行事(祭り、スポーツ大会など)
4.地域貢献(環境保全活動、ゴミ拾いなど)
5.職業体験(1次産業体験、職業型テーマパークなど)
6.文化芸術体験(音楽、絵画、など)
7.科学体験(プログラミング、科学実験など)
8.国際交流体験(異文化交流プログラムなど)
※国⽴⻘少年教育振興機構 「⼦どもの成⻑を⽀える20の体験」パンフレットから。
社会を生き抜く資質・能力を身につけた大人になるための多様な経験は上記8つの領域の中にあるとも言える。キャンプ体験に代表される集団での自然体験には、子どもたちに身に付けてほしい「生き抜く力」を獲得するエッセンスが豊富にあるから、機構も一番として挙げている。英語を使った子どもキャンプなども昨今はあるから選択肢も豊富。親御さんは、夏休みにこどもたちをキャンプに連れて行ったり、キャンプ合宿に行かせたりするのは、子供の成長の為にも、納得だ。親の方も、キャンプは初めてだったり、苦手だったりする場合もあるので、至れり尽くせりの親子キャンプもおススメ。でも、この8つの体験領域の中で感じる違和感は、“プログラミング”という言葉。よくある、ホテルにこもって職業訓練塾さながらの小学生向けのプログラミング教室にでも行けというのだろうか…?夏休みは思いっきり外遊びを体験させたいのが、親としての本音ではなかろうか…?
今やITではなくAIの時代。プログラミング学習は、コンピュータを理解し上手に活用していく力を身に付けることを掲げて、小学校でも必修になっている。「コンピュータを活用することが求められるこれからの社会を生きていく子供たちが将来よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を学ぶ」(小学校プログラミング教育の手引(第三版)令和2年2月文部科学省からの抜粋)だとするのはわかるが、家庭だけでなく、ICTリテラシーの格差がある現状の教育現場に対して、子どもを預ける親も気が気ではない。なぜここに体験としてプログラミングの文字が入っているのか、自然体験とのつながりがあるのか? 自然×体験×デジタルを掲げる「デジタルガキ大将キャンプ」を企画主催するトヨタ白川郷自然學校の學校長 山田俊行さんに伺った(https://toyota.eco-inst.jp/)
「これまでの体験学習なら、野外での体験活動を通じて、コミュニケーション力や学ぶ力、自立心などを含む、生きる力に寄与できると考えられていました。AIに日常的に触れるような今の子どもたちは、生まれたときからスマホがあり、ネット環境がそろい、つねに検索ができ、いつでもどこでもネットワークにつながる。子どもに危ないからナイフはダメ、火を使っちゃダメ、スマホで動画を見てなさい・・なんて親御さんは多いけれども、ナイフや火と同じように、スマホもかなり危ない(笑)。
だけど、我々は、自然の中の体験の中に、ナイフも火も、デジタルも、大自然のフィールドで気付き、探究し、発見をしていくためのツールとして、区別なくフラットに体験させます。デジタルツールを使った子どもたちの体験を通じて自然のサイクルや、更新の物語、ものの道理が「わかった!もっとわかりたい!」と、なればしめたものです。
将来、社会を生き抜く資質・能力を身につけた人になるには、周りにいる大人が、意図的、計画的に多様な体験の場や機会をこどもに作っていくことが大切。子どもたちの成長を支えるよりよい体験環境を創りだすには、身体性のセンサーがおのずと働く自然のフィールドで、自らの五感や身体性の体験設計は当然、タブレットも体験の質を上げるためならガンガン使います。子どもたちには、もはや火やナイフよりもデジタルツールのほうが、なじみがあるわけです。
自然科学の研究領域では、デジタルを使わないフィールドワークはあり得ない時代です。要は、ツールを使う人間側の資質や態度、その基盤が大切なはず。ナイフや火も人を殺せるわけで、デジタルも同じですから。我々が実施している「デジタルガキ大将キャンプ」というネーミングも、10年後には、“デジタル”という言葉がなくなっていくかと。ま、「デジタルガキ大将キャンプ」のタイトルには、”デジタル時代を生き抜く進取の気性があるやんちゃな大人に育ってほしい”、との意味合いもあるんですが(笑)」。
今の大人たちにとって、想像もできないテクノロジーの進化の中で、仲間とともに、先頭に立って新しい価値を創造して社会を支えていく子どもたちにデジタルは欠かせない。
プログラミング的思考やデジタルに向き合う態度、また自然体験を通じて五感と喜怒哀楽の伴う想像力はもちろん、20年後の社会を見越して、テクノロジーと人と自然の知恵を結びつけ、新たな視点や創造力を持ち、未来の挑戦に仲間と立ち向かえる「デジタル時代のリーダーシップ人材」を育成する体験提供が、プログラムが本質だと知れば、国立のいう8つの領域に、すべてデジタルが体験のツールとして入ってきてもいいはずだ。
夏休みを前に、子供たちの成長につながる体験プログラム選びの視点として、是非参考にしてほしい。