吉祥寺東急裏エリアに斬新な中華料理店「sinensis」がオープン


オーナー小野大樹氏が語る業界の課題と解決、そして「文化的な店」というビジョン


12月1日、吉祥寺に新たにオープンした中華料理店「sinensis(シネンシス)」は、練馬区で「ファミリーレストラン」を謳った「POT」2店舗を成功させてきたオーナー小野大樹氏にとって3つめの、そして新たな挑戦となるお店です。店名からメニュー、内装、出店場所まで、小野氏の経験に根ざした思いがたっぷり。その中身を打ち明けてもらいました。【文:高岡洋詞/写真:山口ベン】

東急百貨店脇の大正通りを80mほど歩き、「八条島 浜やん」と「ステーキ屋 松」の間で右折してさらに30m。「挽肉と米」の隣にsinensisはある

sinensisは僕が表現したかった、最高の中華料理屋の形で

「こんな中華料理屋があったらいいのにな」

を表現しました。

https://x.com/daiki_currypot/status/1863406062332006878

 吉祥寺のいわゆる東急裏エリア、激戦区と言われる西二条通りに「sinensis(シネンシス)」が開店した翌日の12月2日、オーナーの小野大樹氏はX(旧Twitter)にこう投稿した。

 sinensisは、小野氏が代表を務めるFamily Restaurant innovation(株)が運営する3つめの店舗。2022年3月に開店したFamily Restaurant POT大泉町店と2023年10月オープンの同東久留米店には「家族連れでも入りやすい、おいしい中華店」という思いを込めているが、sinensisはランチ1500~2000円、ディナー6000~7000円と、カジュアルではあるがPOTよりはややアッパーな価格帯。友人同士の会合やカップルのデート、ビジネスシーンでの利用がターゲットという、小野氏にとっては初めてのチャレンジだ。

営業時間はランチが11:30-15:00、ディナーが17:00-23:00と長めなのがうれしい

中華料理界の課題を解決してきた自信を胸に

 小野氏はトヨタの営業をやめて「その前にやっていた飲食のアルバイトが楽しすぎた」という理由で飲食業界に転じた人である。当時から自分の店を持つことを目標に「飲食に携わることはなんでもやっとかないと」と個人経営の焼き鳥屋からスタートし、多様な業態・職種を経験。「やっぱり料理を極めないと戦えない」という考えに行き着いたときにたまたま渋谷の中華料理店に入ったことが、小野氏の運命を決めた。

「そこのシェフが2人とも、今じゃミシュランのビブグルマンや食べログ100名店に載るような人だったんです。入社初日に食べたまかないがめちゃくちゃおいしくて、いきなり心を捕まれて “この道で生きていこう” と決心しました」

 しかし料理人の世界は厳しい。中華は特にそうで、荒っぽい扱いに一度はメンタルをやられてホールに押し出されてしまったという。くじけることなく、車の営業やバーテンダーの経験で培った接客スキルで数字を上げた小野氏は、厨房にも一目置かれて料理を教えてもらえるようになった。そこで学んだ中華料理のおいしさを広めていくことに人生の目標を定めるが、そこで課題として浮上したのが先述した「厳しさ」だった。

「中華の料理人って人気のない職種なんですよ。いわゆる3Kだし、おしゃれじゃないし、30歳までは鍋も振らせてもらえない。その文化もリスペクトしますけど、今はそういう時代じゃないですよね。中華料理文化の悪弊を取り払いつつ、職人道のいいところも伝えていきたい。中華業界の課題解決は僕にしかできないと思って、あえて “ファミリーレストラン” を謳って出店したのがPOTなんです。大泉の店長は18歳、東久留米は21歳。普通ならキャベツを切るとか、杏仁豆腐を作るとかしかできないキャリアの子たちに、僕が先輩たちから学んだレシピを伝えて、鍋を振ってもらっています」

 その2店で「毎日、満席です」と胸を張る成果をあげ、新たなチャレンジとして出店したのがsinensisというわけだ。

カジュアルだけれどおいしくて高級感のある料理を

「シェフは1つ星の店で2番手を務めていた人なんです。彼も僕と同じ叩き上げで、きつかったし、もう時代に合わないからやめたほうがいいと思うけど、料理はクォリティ高くやりたいという考え方。そこが一致したので、カジュアルだけれどおいしくて高級感のある料理を提供していきたいと思っています」

 sinensisは英語で「中国の」という意味の形容詞で、命名は「絶対に負けない!飲食経営の学校」の黒瀬実寿希氏。カメリア・シネンシスという中国茶の品種からいただいた名前だそうで、店としてもお茶と、もうひとつはごはんにこだわりたいという。なにしろ黒瀬氏に相談する前に小野氏が決めていた店名は「土鍋のジョージ」だったほどで、土鍋で炊いたおいしいごはんが楽しめる。

 話を聞いたのは開店直前の時期。どんなものを出していくのか聞いたところ、「フカヒレや上海蟹に力を入れていく」と言っていた。「王道の高級食材を使って、ミシュラン店の2、3番手の若いシェフが作るから価格を安くできる、その誤差にバリューを感じてもらいたい。エビマヨ、エビチリ、角煮、酢豚と、とにかくわかりやすい料理を味にこだわりながら出していくので、若いお客さんも入りやすいと思いますし、写真も撮ってくれたらうれしいですね。いまはSNSも大事なので “映え” ももちろん意識しています」

よだれ牛肉
よだれ鶏
ゴロゴロ酢豚
トロトロ角煮仕立て
四川式麻婆豆腐
海老のチリソース

中華版「リゴレット」のような長く続く文化的な店に

 映えといえば内装にもこだわっている。古民家をリノベーションし、古い装備や什器をうまく活かした親しみやすく落ち着いた雰囲気は、小野氏の狙い通り若者から大人まで広く愛されそうだ。

古い柱の質感がグリーンの色調にマッチしている

「グリーン基調はデザイナーさんのアイデアです。最初は僕の意見に合わせてくれたのですが、 “それじゃあなたにお願いした意味がない。工期も予算も気にしないで、やりたいようにやってください” と言って、結果的にすごくかっこよくなりました。料理も一緒で、万人受けする味じゃなくても、確かなメッセージとストーリーがあって、自信を持って作った料理なら、出していいと僕は思うんです。その自信が職人のかっこよさだし、僕がリスペクトする部分でもあるので」

座席数は42。貸切もできるのでパーティにも
カウンター席でほっとひと息
角席はデートや商談にぴったり

 対人コミュニケーションが得意で、広報やSNSの使い方にも意識的でありつつ、現場で叩き上げられた経験と何より料理への愛情ゆえ、昔気質の料理人とその文化への敬意も厚い。ビジネスを複眼的に眺めて判断できるハイブリッド経営者の小野氏に、sinensisをどんな店に育てていきたいかを最後に聞いた。

「ひとことで言うと中華版リゴレット(近隣にあるスパニッシュイタリアンレストラン「Cafe RIGOLETTO」)みたいな店にしていきたいというか、なると思っています。リゴレットは業態もメニューも先進的なお店として開店して、長く愛されてきました。彼らが開発したこの通りに恥じない店作りを、これから命がけでやっていきます。僕の会社にとっては大きな挑戦ですし、いまやっている方法が間違っていなければ、10年、20年続く文化的な店になると思っています」

左から小野オーナー、仲シェフ、関店長

●sinensis(シネンシス)

住所 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-8-3 吉祥寺キッシュ

電話番号 0422-27-2142

営業時間 11:30-15:00/17:00-23:00

公式SNS https://www.instagram.com/sinensis.kichijohji/



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