2024年10月の景気動向調査
株式会社帝国データバンクは、全国2万7,008社を対象とした2024年10月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表いたしました。
<調査結果(要旨)>
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2024年10月の景気DIは前月比0.3ポイント減の44.3となり、4カ月ぶりに悪化した。国内景気は、節約志向の高まりで個人消費の停滞が響き、上向き傾向が一服した。今後の景気は、物流コストの上昇や中東情勢など、下振れ懸念を抱えつつも底堅く推移していくとみられる。
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『サービス』『小売』など10業界中6業界が悪化、全業界で50を下回った。飲食料品やアパレルなどを中心に個人消費が停滞、特に『小売』は1年8カ月ぶりに30台に低下した。地域別では、10地域中8地域が悪化、2地域が改善した。観光需要が伸び悩んだことに加え、季節需要や一部地域における公共工事の低迷が地域経済の下押し要因となった。規模別では、小幅ながら6カ月ぶりに「大企業」「中小企業」「小規模企業」がそろって悪化した。
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10月からの最低賃金の引き上げは、景気回復への期待がある一方で、企業にとっては経費増につながり利益を圧迫しているといった声が多い。
< 2024年10月の動向 : 上向き傾向が一服 >
2024年10月の景気DIは前月比0.3ポイント減の44.3となり、4カ月ぶりに悪化。
国内景気は、季節需要の低迷や節約志向の高まりが下押しし、上向き傾向が一服した。
10月は、長引く残暑による秋冬物の出足の鈍さに加え、買い控えや選別購入など節約志向の高まりにより、個人消費が停滞し、景況感が悪化した。人手不足や最低賃金の引き上げによる人件費の増加は企業の収益性を抑制する要因となった。原材料費の高騰で飲食料品関連は上流から下流まで全体的に悪化した。
一方で、防災・災害復旧工事などの建設関連のほか、大都市圏での再開発は好調だった。さらに、自動車生産の回復や好調なインバウンド需要の継続もプラス材料として働いた。
< 今後の見通し : 下振れ懸念を抱えつつも底堅く推移 >
今後は、個人消費の動向が景気の先行きを左右するとみられ、実質賃金の継続的な上昇がカギとなろう。さらに、金利や為替レート、株価などの金融市場の動向などにも注目が集まる。また、政局の不安定化や米新大統領の経済政策の行方も注視する必要がある。
プラス材料としては、観光産業の回復や人手不足に対応する設備投資の実行、リスキリングの浸透、生成AIの普及、半導体の需要拡大などがあげられる。
一方で、物流コストの上昇やインフレの進行、中東情勢などはマイナス材料となろう。
今後の景気は、下振れ懸念を抱えつつも底堅く推移していくとみられる。
業界別:10業界中6業界で悪化、個人消費の停滞と人件費増加が重しに
『サービス』『小売』など10業界中6業界が悪化、全業界で50を下回った。飲食料品やアパレルなどを中心に個人消費が停滞、特に『小売』は1年8カ月ぶりに30台に低下した。他方、防災・災害復旧工事、自動車生産の復調などは押し上げ要因だった。
『サービス』(49.8)…前月比0.6ポイント減。2カ月ぶりに悪化。「飲食店」(同3.1ポイント減)は、原材料費の増加や人手不足などに加え、「外食意欲がないと感じる」(一般食堂)といった声も聞かれ2カ月連続で落ち込んだ。また、最低賃金の引き上げにともなう人件費の増加などが響く「メンテナンス・警備・検査」(同0.2ポイント減)も同じく2カ月連続で悪化。「診療報酬制度が物価上昇に釣り合わない」(一般病院)などといった声が寄せられる「医療・福祉・保健衛生」(同0.4ポイント減)は3カ月ぶりに悪化した。他方、インバウンドや国内旅行が好調な「旅館・ホテル」(同1.6ポイント増)は2カ月連続で改善した。
『小売』(39.7)…同0.6ポイント減。2カ月連続で悪化。1年8カ月ぶりに30台に。節約志向の高まりにより、購入点数や来店頻度の減少などから「飲食料品小売」(同3.3ポイント減)は2カ月連続、総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(同1.7ポイント減)は3カ月連続で悪化した。「秋物の動きが悪い。気温の高い日が続き、購買意欲が落ちている」(婦人・子供服小売)といった声が聞かれる「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同2.4ポイント減)は2カ月連続で落ち込んだ。他方、価格が上向く中古車市場がけん引し「自動車・同部品小売」(同3.4ポイント増)は4カ月ぶりに改善した。
『運輸・倉庫』(44.7)…同0.7ポイント減。3カ月ぶりに悪化。燃料価格の高止まりに加え、ドライバー確保の問題などが下押し材料となった。さらに、「中国向け出荷が激減している」(港湾運送)というように海外経済の影響なども悪材料としてあげられた。他方、貸切バスの利用が拡大していることなどは押し上げ要因となったほか、災害復旧関連の輸送需要があるといった声も寄せられた。
『製造』(40.8)…同横ばい。原材料や包装資材などの高騰、消費低迷により「飲食料品・飼料製造」(同0.9ポイント減)は4カ月ぶりに下落、飲食料品関連は川上から川下まですべて悪化した。「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同0.2ポイント減)は「自動車関連は回復してきたが、建機、工作機械などはまだ底を抜け出せない」(金属熱処理)などの声が聞かれ4カ月ぶりに悪化した。他方、自動車メーカーの復調などから「輸送用機械・器具製造」(同1.1ポイント増)は3カ月ぶりに上向いたほか、「電気機械製造」(同1.2ポイント増)は2カ月連続で改善した。
規模別: 小幅ながら6カ月ぶりに全規模がそろって悪化
「大企業」「中小企業」「小規模企業」が6カ月ぶりにそろって悪化。『不動産』『卸売』『サービス』が全規模で下落した。「中小企業」「小規模企業」の飲食料品関連は製造・卸売・小売・飲食店ともに落ち込んだ一方で、「大企業」は設備投資関連が堅調だった。
「大企業」(48.3)…前月比0.2ポイント減。6カ月ぶりに悪化。低調な動きが続いている住宅着工戸数の影響を受け、住宅資材関連は厳しい状況となった。一方で、設備稼働率が上昇傾向で推移しており、設備投資に関連する需要は旺盛だった。
「中小企業」(43.6)…同0.3ポイント減。4カ月ぶりに悪化。「原材料(肉・魚・野菜・調味料)の高騰が止まらない」や「消費マインドが低下」といった声が聞かれ、飲食料品関連の製造・卸売・小売・飲食店がいずれも低調だった。
「小規模企業」(42.7)…同0.3ポイント減。5カ月ぶりに悪化。『サービス』は、ソフト開発業において若手人材の採用難で受注機会の逸失が続いたほか、リース関連も大幅に悪化した。一方で、貸切バスなど旅客運送は運賃の上昇が好材料だった。
地域別:10地域中8地域で悪化、季節感の喪失が地域経済にも影響
『北海道』『近畿』など10地域中8地域が悪化、『四国』と『北関東』の2地域が改善した。都道府県別では27都道府県が悪化、19府県が改善。観光需要が伸び悩んだことに加え、季節需要や公共工事の低迷が一部の地域経済で下押し要因となった。
『北海道』(44.1)…前月比1.3ポイント減。5カ月ぶりに悪化。「日胆」「道東」エリアがともに2ポイント以上下落した。旅行客が伸び悩んだことに加えて、「来客数と売上額の減少」などの声もあがる『小売』が全体を大幅に下押しした。
『近畿』(43.8)…同0.2ポイント減。4カ月ぶりに悪化。域内2府4県のうち3府県が低下した。厳しさが続く鉄鋼や紙類・文具など『卸売』が下押し要因となった。さらに「季節感が削がれて、外食意欲がない」といった「飲食店」も大きく悪化した。
『四国』(41.2)…同0.5ポイント増。3カ月連続で改善。域内4県中3県が改善、「高知」が悪化した。プラスチック製造などが好調だった『製造』や建材・家具卸売が上向いたほか、「中小企業」が6カ月ぶりに40台へ回復するなど景況感を押し上げた。
【今月のポイント】最低賃金引き上げに対する影響
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10月からの最低賃金の引き上げは、景気回復への期待がある一方で、企業にとっては経費増につながり利益を圧迫しているといった声が多い
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採用時の最低時給は、平均1,167円、2024年改定の最低賃金を112円上回る。なお、人手不足企業では平均1,174円とさらに高く設定している