スポットワーク(スキマバイト)に関する企業の意識アンケート
空き時間に短時間、単発で働く「スポットワーク(スキマバイト)」という新しい働き方が広がりをみせている。
働き手側においては、履歴書や面接が不要で、自分の都合に合わせて短時間・単発で働ける気軽さ、企業側では必要な時に必要な人員を柔軟かつスピーディーに確保できる点がスポットワークの魅力である。スポットワーク仲介サービスのパイオニアと言われている「タイミー」は2024年7月に上場を果たしたほか、同様のサービスを始める企業も相次いでおり、市場が急拡大している。
そこで、帝国データバンクはスポットワーク(スキマバイト)を請け負う「スポットワーカー」の活用について企業にアンケートを実施した。
<調査結果(要旨)>
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企業の約4割がスポットワーカーの活用に前向きである一方で、リスク管理などの課題も多い
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業界別、特に単発で対応しやすい、「個人向け販売」を含む『小売』や、『運輸・倉庫』などで活用に前向きな企業の割合が高い
※アンケート期間は2024年11月8日~12日、有効回答企業数は1,685社(インターネット調査)
※調査機関:株式会社帝国データバンク
企業の約4割がスポットワーカーの活用に前向きである一方で、リスク管理などの課題も多く
スポットワーカーの活用に興味があるか企業に尋ねたところ、 「既に活用している」が8.3%、「活用を検討している」が5.3%、「検討はしていないが、興味はある」が24.5%だった。合計すると、『活用に前向き』な企業は38.1%となった。
一方で、「興味はない」企業は49.8%だった。
「活用に前向き」な企業においては、「最低賃金の上昇に加え、新規人材の確保も容易ではないため、活用を検討している」(繊維・繊維製品・服飾品小売)といった声にあるように、人手不足への対応が背景にある企業が多かった。また、「働き手の空き時間を利用できるので、社会全体の生産性が上がり、良いと考える」(専門サービス)とのコメントもあがった。
他方で、「スポットワーカーの活用は人手が足りない隙間の時間を埋められるメリットがあるが、さまざまな人間が入れ替わることで内部的な情報漏洩も考えられ、検討段階にとどまっている」(旅館・ホテル)や「人手不足の解消には有効だと思うが、労働者の質が分からないため、望んだ成果を得られないなどの懸念点がある」(不動産)というように、興味はあるもののリスク管理や採用ミスマッチに関する不安から活用を躊躇する様子もみられた。
活用に「興味はない」企業からは、「作業の正確性やスピードを担保することが難しい」(化学品製造)や「当社はメーカーであり、安全管理や品質管理の観点からスポットワーカーの活用は現実的ではない」(鉄鋼・非鉄・鉱業)など、品質の低下や作業効率の悪化を不安視するコメントがあがった。また、「受け入れ・教育コスト、業務の分担など、スポットワーカーを受け入れるためのコストや労力がかかる」(飲食店)のように、コストの発生に関する懸念の声も聞かれた。
業界別、特に単発で対応しやすい、「個人向け販売」を含む『小売』や、『運輸・倉庫』などで前向き
スポットワーカーの「活用に前向き」な企業の割合を主な業界別でみると、『小売』(50.6%)は全体(38.1%)を12.5ポイント、『運輸・倉庫』(46.8%)は全体を8.7ポイントそれぞれ上回った。
さらに細かい業種でみると、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」は活用に前向きな企業の割合が55.2%と突出して高かった。
一方で、ソフト受託開発など「情報サービス」は23.7%と全体を14.4ポイント下回ったほか、「建設」(30.3%)も比較的低い割合となった。企業からは、「技術職なのでスポットワーカーでできることが少ない」(情報サービス)や「建築業は専門性が高い業種のため、活用は難しい」(建設)など、専門性を求められる技術職が多い業種では親和性が低いといった意見が複数あがった。
スポットワーク(スキマバイト)を請け負うスポットワーカーの活用は、急な欠員が出た際や繁忙期などにおいて企業の人員確保の手助けとなるほか、人材の長期雇用への引き抜きが一般的に可能であるため、中長期的な人手不足の解消効果も期待される。本アンケートでは、スポットワーカーの活用に前向きな企業は4割近くとなり、人手不足の解消効果を期待するコメントが複数あがっていた。また、働き手が隙間時間を使うことによる社会全体の生産性向上を期待する声も聞かれた。
一方で、活用に興味がない企業は半数だった。専門的なスキルや技術を要する仕事では依頼できる業務はないとする声が多いほか、対応できる業務があっても、品質の低下や作業効率の悪化、情報漏洩などさまざまなリスクを懸念する様子がうかがえた。さらに、受け入れ体制の準備と都度の業務に関する説明や指導で、時間と費用がかかってしまうとの声も複数聞かれた。
企業におけるスポットワーカーの活用は、自社業務との相性の見極めが欠かせないほか、費用・時間のコストおよびリスクへの対応など解決すべき課題はありそうだが、働き方の多様化と人手不足の深刻化により、スポットワークは多くの働き手と企業の有力な選択肢として期待されよう。
企業からの声
「スポットワーカーの活用に前向き」
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季節要因への対応として一時的にスポットワーカーを雇っている(運輸・倉庫)
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スポットワーカーを活用しており、今後も今以上に活用していきたい(広告関連)
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人手不足が解消されると考える(紙類・文具・書籍卸売)
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設計開発業務がメインであり、負荷状況に応じて外部の方にスポットで協力をしてもらっている(専門サービス)
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非常に興味があるが、なかなか必要としている人材に巡り会えない(家具類小売)
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スポットワーカーの活用は時間帯で人員不足が起こる業種では非常に助かると考えるが、長期的にみると正社員数や正社員採用数の減少につながり、悪影響が出てくる恐れがある(医療・福祉・保健衛生)
企業からの声: 「スポットワーカーの活用に興味がない」
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単純労働でもやり方の説明や習熟にある程度の時間がかかるため、スポットワーカーを入れても労働力としてマイナスになる気がする(建設)
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アルバイトでも法定研修が必須な職種のため、スポットワーカーの活用は難しい(メンテナンス・警備・検査)
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製造現場・バックオフィスともに熟練が必要なため、スポットワークには向いていないと考える(その他の卸売)
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景気の上下によって人手が欲しい状況もあるが、働き手がどんな人物か分からないうえ、仕事内容的にも利用するには環境が整っていない(農・林・水産)
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技術職を求めているため、スポット的な仕事は定年した人を再雇用し、対応してもらっている(繊維・繊維製品・服飾品製造)
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スポットワークで気軽に働く環境が当たり前になると、良い仕事をする環境作りが疎かになる(飲食料品小売)
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技術や知識、経験が不要で単発でできる仕事は、スポットワーカーの活用で補うのではなく、IT化・機械化を進めるべきだと考える(専門サービス)
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一定期間の経験・教育を有する職種・業種では、効率の悪さや安全性の問題が生じてしまう(出版・印刷)
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スポットワークのプラットフォームは闇バイトの広がりを助長してしまう可能性があると聞く。しっかりチェックして掲載させないような仕組み作りが求められる(その他サービス)