日本人の掃除に対する独自の傾向、世界との比較結果
清掃機器の世界最大手メーカー、ドイツ・ケルヒャー社は、世界10か国においてお掃除についての意識調査を行いました。各国の「お掃除事情」から見えてくる、世界と日本の興味深い特徴についてご紹介いたします。
ケルヒャー世界のお掃除アンケートについて
使用されたデータは、Dynata社(オンラインリサーチ会社)が実施した調査に基づきます。2024年6月から7月にかけてドイツ、オランダ、オーストリア、フランス、ベルギー、イギリス、ポーランド、オーストラリア、アメリカ、日本の10カ国の18歳~65歳の男女合計10,025人を対象に、お掃除習慣に関するアンケートを実施いたしました。各国につき、少なくとも1,000人の回答者から回答を得ています(日本の回答者数:1,000人)
国際的には、お掃除の知識は「母」に学ぶ。でも日本では、「テレビ」がトップ!
国際的に見ると、掃除のスキルを教えるのは母親が牽引役になっています。性別に関係なく、回答者の77%が、「お掃除の知識を母親から教わった」と答えました。しかし、男性にとって父親は特に重要な情報源です。男性の14%が、掃除のスキルを父親から学んだと回答しています。しかし女性の場合、この割合は8%とかなり低くなりました。そして、ここで興味深いのが日本の結果でした。
日本に見られる他国と異なる傾向
日本では、母親から掃除の秘訣を学ぶと答えた人は2位(57%)に留まりました。日本で掃除のスキルを得るための情報源の1位は「テレビ」(66%)。日本人の3分の2は、テレビから掃除のヒントを得ていることが分かったのです。これは国際的に見ても日本特有の傾向です。
この理由はいくつか考えられるでしょう。まず1つ目に、日本のテレビ番組は「情報バラエティ番組」や「雑学番組」が多く、掃除のコツを含む家事の豆知識が、昼間の情報生番組や夜のゴールデンタイムに放送される機会が多いということ。
2つ目に、欧米の子どもは、赤ちゃんの頃から子ども部屋が与えられて一人で寝起きする習慣があり、母親が幼少期から子ども部屋の片付けや掃除方法を教える文化があります。しかし、日本では親子が同室で眠る期間が長く、子どもが一人部屋で寝起きする年代になる頃には、親は子ども部屋の掃除に関与せず、子どもの自立を促すためにその役割を委ねる傾向にあります。こうしたことから、幼少期に母親から掃除を教えてもらう機会が少なくなりがちです。
3つ目に、日本では学校で掃除の方法を身につける文化があるということです。私たちは小学校で「学校清掃」を行うことが多いですが、国際的には学校の掃除はプロに任せることが多く、教育的な効果を考えて、学校で生徒自身が掃除を行っている国は少ないとされています。
幼少期から、家庭で掃除の仕方を十分に教えてもらう機会が少なく、逆に家庭の外で掃除の知識を得る機会が多かった日本人は、大人になってからも、常に触れやすいテレビ番組などから掃除のコツを得ていると考えられます。
お掃除を行う理由で最も多いのは「衛生上の必要性」。でもドイツ人は「来客」、日本人は「お掃除に挑戦したい」!?
掃除を行う理由で国際的に最も多いのは、「衛生上の必要性」(75%)でした。中でも、ポーランドの回答者(87%)は、掃除の最大の理由として衛生面を挙げ、日本(84%)やオランダ(83%)を上回る「きれい好き」であることが分かりました。こうした国際的な傾向とは異なり、ドイツ人が掃除をする最大の理由は「来客」(60%)でした。ドイツ人は自宅に誰かを招くために掃除をしていることが分かりました。
またドイツでは、女性(10%)の2倍の男性(20%)が、掃除を行う理由を「同居人との口論を避けるため」と回答しました。ドイツ男性の5人に1人は、共同生活での家庭内での争いを避けるために掃除をしていることが分かります。
日本に見られる他国と異なる傾向
掃除を行う理由で「お掃除に挑戦したいから」と答えた人は、国際平均ではたったの8%でしたが、日本の回答者は29%と突出していました。日本人は、掃除で部屋をきれいにすることを「チャレンジすべき試練」と捉えているのかもしれません。
また、ドイツなどで多かった「同居人との口論を避けるため」という理由は、日本の回答者では5%(男女合計)に留まり、国際的に最も少ない結果となりました。これは、掃除がジェンダーロール(性役割)として母親の役割に固定されており、そもそも口論が発生していないことの現れかもしれません。こうしたジェンダーロールは解消されることが望ましく、掃除は家族みんなの課題として認識していきたいところです。
大半の人にとってお掃除、特にカーペットの染みや、曇りのない窓ガラスは難題!
「お掃除で特に難しいと感じている場所は?」という質問の結果からは、次のことが分かりました。
「ほこりやカーペットの染み抜き」は全ての国で、回答者の3分の1(33%)が非常に難しいと答えています。続いて「高所のお掃除」(32%)や「曇りのない窓」(30%)が挙げられました。
国際的に、窓は「時々お掃除をする」という人が半数弱(44%)で最も多い結果となりました。「頻繁にお掃除をする」と答えた人は全体の26%で、特にベルギーでは34%と高くなっています。逆に、 「ほとんどお掃除をしない」と答えた人は全体の20%で、中でも日本人は、ほとんど掃除をしないという回答が多い(35%)ことも分かりました。
照明やスイッチは、全体の31%が「お掃除しない」(「ほとんどしない」「全くしない」の合計)と回答していますが、日本では51%と最多になりました。
日本に見られる他国と異なる傾向
日本人は「窓」をほとんど掃除しない(35%)と答えており、「照明・スイッチ」も掃除をしない(51%)と回答した人が最多となりました。
日本人が窓をほとんど掃除しない理由は、そもそも日本ではマンション住まいや、戸建てでも住宅が狭かったりすることから、「住宅に窓が少ない」ことによる影響が考えられます。また、日本では靴を脱いで生活をするライフスタイルであり、窓が床から比較的高い位置に作られていることもあって、窓が居室側から汚れにくいことや、外壁側も舗装されたアスファルトの道路が多く、土の庭が少ない「窓が汚れにくい住環境」であることも、理由として考えられるのではないでしょうか。
また、照明を掃除しない理由については、海外は吊り下げ式でかさのある「ペンダントライト」が主流なのに対して、日本の住宅照明は、天井に貼りつく形の「シーリングライト」が多いことが挙げられます。照明のかさがないために汚れが目立たず、天井に貼りついた照明を外して掃除をするのも大変なので、年末大掃除くらいでしか掃除をしない…ということが考えられるでしょう。同様に照明のスイッチも壁に貼りついているため汚れにくく、それほど意識していないことが伺えます。
「疲労」「散らかり」「掃除用具の不足」がイライラの原因となり、お掃除をしない口実の上位に。
「あなたがお掃除をしない、または先延ばしにする理由のトップ3は?」という質問に対しては、国際的に以下の回答が得られました。
1位「時間もなく、日々の生活に疲れている」…全体の回答者のうち77%が、掃除を先延ばしにする口実として挙げています。その割合は、日本人回答者が最も多い(83%)という結果になりました。
2位「物があふれて散らかっている」…次に多い口実は、物があふれて散らかっており、障害が多すぎること(53%)で、この口実は特に日本で多く見られます(68%)。
3位「手元に適切な掃除用具がない」…回答者の3分の1以上(36%)は掃除用具の不足を、掃除をしない口実にしています。この口実は特にポーランドで多く見られました(42%)。
4位「家や物を100%きれいにできないといういら立ち」…これは世界的に4番目に多い口実(33%)でしたが、特に日本ではいら立ちが強い(48%)結果となりました。
日本に見られる他国と異なる傾向
1位「時間もなく、日々の生活に疲れている」
国際的に見て、日本人回答者が最も多い結果(83%)となりました。日本人は日々の忙しさから疲れを感じており、掃除をしたくない、あるいは先延ばしにしたいと思っているようです。それは、「1週間のうちお掃除に費やす時間は?」という質問で、日本人は「最大1時間以内」(国際平均は48%、日本は60%)の回答が最多であることによっても裏づけられています。
また、「お掃除の際に使う用具は?」の質問では、「重曹、お酢、レモンなどの家庭にあるもので対処」(国際平均は40%、日本は8%)、「ほうきなど手で使う道具」(国際平均は80%、日本は72%)が国際的に見て少ないことも、重曹やほうきなどをわざわざ使って行う「時間のかかる丁寧な掃除」をする余裕がないことが見て取れます。「忙しくて時間がなく、いつも疲れていて掃除に割ける時間と心の余裕がない…」というのが日本人の気持ちで、日本人にとっては、掃除は短時間で効率的に済ませられることが重要だといえるでしょう。
2位「物があふれて散らかっている」
他の先進国に比べて、日本の家は「圧倒的に物が多い」ということが分かっています。荷物の量が多すぎて納まらないために、掃除の前に必要な「片付け」が難しいのだと考えられます。「お掃除の際に使う用具は?」の質問で、日本は「バッテリー式掃除機」が他国に比べて多い(国際平均は34%、日本は49%)ことからも、物が多くて掃除機のコードが引っかかりやすいために、コードがないバッテリー掃除機の需要が高いことも推測されます。
4位「家や物を100%きれいにできないという、いら立ち」
日本の回答者の、家をきれいにできないことへのいら立ちの強さは、「いつも時間に追われていて、丁寧に掃除をする余裕がない。そして物が多くて片付けが大変なので、掃除まで行きつけない」という気持ちの裏返しだといえるでしょう。
ケルヒャー ジャパンでは、本調査から読み取れる日本特有の掃除習慣を踏まえ、お客様のニーズにあった清掃ソリューションを提案します。また、掃除におけるジェンダー平等や、持続可能性についての国際的な意識にも学び、日本における取り組みを推進してまいります。
ケルヒャー ジャパン株式会社について
ケルヒャー ジャパンは、ドイツで生まれた世界最大手の清掃機器メーカー、ケルヒャーの 18 番目の現地法人として 1988年に設立されました。ケルヒャーは 1935 年の創立以来、革新的な技術開発を続け、高圧洗浄機をはじめ、床洗浄機、スイーパー、スチームクリーナーなど、家庭用から業務用まで 3,000 種類もの清掃機器を有し、世界約80カ国で愛用されています。また、総合的な洗浄技術を活かし、ニューヨークの自由の女神やリオデジャネイロのキリスト像、東京・日本橋など、世界的に有名な建造物や彫像の洗浄・再生する文化貢献活動も手がけています。
ケルヒャーは、クリーンな世界の実現にむけて、人々の豊かな暮らしを支えるための快適な清掃体験を提供してまいります。