テレビ大阪
以下、「【#ドキュメンタリー】西成。ここは天国♪「釜ヶ崎人情」~令和に紡ぐ、歌に込められた想い~ 」の概要欄より
この曲、知っていますか? 50年間、大阪で歌い継がれている歌謡曲です。このメロディーを奏でたピアノがふるさとに里帰りしました。場所は西成、釜ヶ崎の病院です。
西成焼き鳥ジローさんの歌
「♪義理の人情もドヤもある~ここは天国」
「これは歌えるやろ、釜ヶ崎人情」
昭和42年に生まれた釜ヶ崎の日雇い労働者を歌った曲。半世紀たった今でも西成に集う人々に愛され続けています。
【ライブの歌♪】
「(ここは~天国)ここは天国釜ヶ崎~」
【住人】
「天国じゃない地獄や。みんな…生活保護を受けてる人ばっかりやな。みんな人間の負け犬やな」
当時レコードは70万枚売れ大ヒットしました。この歌を生み出したのは大阪を代表する作詞家・もず唱平さんと作曲家・三山敏さん。二人のデビュー作です。もずさんは釜ヶ崎に足しげく通い、労働者たちと酒を酌み交わしながら話を聞き、この曲を書きました。ここで生きるしかない境遇を受け入れ、精一杯、日々を愉しむ、もずさんは「天国」と歌詞にこめたのです。
【もず唱平さん】
「取材活動はかなり熱心にやった。頭の中で考えたものではなく足で稼いだもの。私が詩を書く工程を一番理解してくれたのが三山敏です」
もずさんがつむいだ歌詞に三山敏さんがここで曲をつけました。ピアノを弾くのは娘の裕子さん、幼いころからピアノに慣れ親み、自身も音楽の道を歩んでいます。
【娘・田中裕子さん】
「煙草を吸いながら作曲していたのでピアノの横に灰皿を置いて部屋真っ白になりながらやってましたし、鍵盤とか煙草の焼け跡がいくつか残っています」
作曲家の三山敏さんは2022年の春、病気で亡くなりました。
【弟子】 「三山先生の分も長生きして下さいよ。
【もず先生】
「いやあ、このところガックリ来ているから、何時お迎えが来てもいいように、ほとんど準備(終活)は終わりました。ただ、人の世の中に歌がなくなることはあり得ないから、時代の鏡みたいなものやから」
実家にひっそりと残されていた三山さん愛用のピアノ…二人のデビュー作にゆかりのある
「釜ヶ崎」の病院に寄付しようともずさんから提案が。
10月1日。ピアノを釜ヶ崎に送り出す日。
【娘・田中裕子さん】
「なんか関係ないかもしれないけど、お嫁に行く時のことを思い出して何とも言えない気持ちになります」
ピアノが着いた先は釜ヶ崎にある病院。半世紀以上日雇い労働者たちの医療を支えてきました。もずさんはピアノだけでなくこの曲の印税も病院に譲渡すると決めました。そのお金は日雇い労働者たちのがん検診などに充てられる予定です。
【病院理事長】
「(もず先生は)きょう体調を崩されて電話もしたんですけど、頑固に病院に来てくれないんですよ」
準備された式典会場に体調不良という理由でもずさんの姿はありませんでした。ここで、ピアノの第二の人生が始まります。
【娘・田中裕子さん】
「(三角公園で)先生の作品作りのルーツであり現在もそれを想いながら作られている、一貫して。そういう想いがまた物事を紡いでいくんだなとすごく感じます」
10月16日。国立文楽劇場で歌手と落語家の30周年を記念したイベントが開かれました。
会場にもずさんの姿がありました。歌手の新曲を自身が手がけたからです。
歌のタイトルは「道行き」。道行きとは男女の駆け落ちや心中のこと。ただし、この歌は
少し違います。
【浅田あつこ】
「今回の歌のテーマは「命の尊さ」をテーマに書いて頂いています」
【もず唱平さん】
「生きてきたからこそいろいろ、間違ったなとか良かったなとかいうことが結論出るのであって、愛や恋や言うてもやっぱり生きててなんぼ」
心中を迫られた遊女が現実逃避せず、力強く生きるさまを歌っています。
【歌】「♪あんたが死ぬと言うたかて、うちは死なへん、死んだりせんで…」
弱い立場の女性の生きる権利と命の大切さを歌詞に込めています。歌に込めたメッセージを次の世代にも伝えたい…もずさんたちは衣装の制作を大阪の高校生たちに依頼しました。
彼女たちは大阪市内にある公立高校でファッションを学ぶ生徒たち。もずさんも歌手とともに歌のイメージを伝えるため、何度も高校を訪れ、対話を重ねてきました。この日、2着の衣装がほぼ完成し、関係者にお披露目です。
【生徒】
「青は冷静」
「なんで赤にしたかというと強い女性、意志を曲げない女性表すためにぱきっとした赤色のドレスをデザインしました」
【もず唱平さん】
「命の根源に迫ってくれている。ぼくの今回の歌作りは命の根源に何とか及ばずながらでも挑戦したいというのが歌作りの原点なので、こういうチャンスができたのはとても嬉しい」
歌を通じて、高校生たちにも想いは届いたようです。しかし嬉しい時間は、つかの間。
もずさんはこの曲を最後に作詞家としての活動を卒業するといいます。
【もず唱平さん】
「釜ヶ崎が出発点で今回の道行きが終点かな」「歌は時代を映す鏡」―もず唱平
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